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yamakanakanro

~ 言葉は万華鏡 千変万歌す ~言霊は鏡面反転で歌遊びする



******装丁紹介******


文芸作品でこの世に爪痕を残そうと、思い立ったのは今から8年前になります。和歌にも俳句にもほとんど縁の無い興味もあまりなかった頃でした。その時はネットにポツポツと投稿するだけだったのですが、いつの間にか積もって数百歌、そうするとやはり本にしたくなるのですね。手製本にしてからは作品を創るエネルギーよりも製本作業の時間と労力の方が大きいのかもです。中身も大事なのですが、製本の舞台裏を少し見て頂き、そんな本の仕上がりにも注目して頂けると苦労も報われる思いです。


それではどうぞ、本が完成するまで、装丁の舞台裏をのぞいてみてくださいませ。


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2016年に初めて本を出した時から装丁には実はかなり手を掛けてまいりました。

3冊目からは自作で本を造っています。内容が無事書き上がると私は製本屋さんに変身します。

そして紙はA5サイズなので裁断機でA4を半分に切るところから始まります。


裁断機も重かったのですが、コピー機は想定を超えてて死ぬかとおもうほど重い業務用最下位機種を二階に上げたのは今でも神がかってたと思います。


自作でいかにきれいに内容を反映したイメージに近い装丁にするか、考えて和紙の美しさに出会ってこの形が決まりました。以来、自作製本の場合このスタイルにしていくことに決めました。


~裁断屋さん~


裁断機で手作業で目視でA4からA5に裁断する作業は想定を超えた困難を極めました。わずかでもズレると紙を無駄にします。1mmのズレは製本時致命的でした。そして裁断機は簡単に台形に紙を裁断しました。どんなにきつく押さえを締めてもズレました。裁断機に施された方眼メモリは信用できないものでした。その升目を信じてセットして、きれいに二分割出来た事は1回もありませんでした。そのナゾが分かった時、製本屋さんがHPで「職人が一点一点丁寧におつくりします」と言っていたわけが分かった気がしました。まさに紙の裁断だけでも一枚一枚丁寧に最後はカンも頼りにズレを予測してあらかじめその分の1mm以下をあえてズラして置き・・という作業をしないとなりませんでした。様々な工程のポイントで一点一点丁寧に作らないと綺麗にいかないのです。


もしや一番簡単にきれいに、と思ったやり方はもっとも過酷なやり方だったのかわかりませんが、最終的に仕上がりに和紙を背中から表裏面に貼りたいというデザインが気に入ったのと自作できれいに仕上げるにはこの方法しか思いつかなかったのでしています。


今回和紙は同じテーマのものが手に入らず、たぶんもし次増刷する時は図柄が変わっている可能性があります。また、「歌は道~」のテーマ和紙としているこの図柄は数年前に廃版になった図柄で、その時あった在庫を全部買いしているものですが、これが無くなった時点でこの本は絶版にする予定です。和紙屋さんに復刻はしないのか聞いたところ印刷に使用する版板そのものを処分している可能性がと言われてしまいました。


裁断→印刷(このコピー機もだんだん変になってきて、というか、不思議なのは、原稿に致命的不備があると、なぜか印刷が汚く汚れて出て来るとか、止まってしまったり、指示通りに出してくれなかったりするんです。信じてもらえないかもしれないのですが、これが本当に不思議なんです。)と無事に進むと、


今度は綴じになるのですが、おおそうだ、そのノリ付けの前の大事な作業がありました。トントンです。


~トントン屋さん~


トントントントンヒノノニトンとは言い誤る事はないのですがトントンマシンと化したような私の脳内は修行僧のムだと思います。このトントン作業が本の美しさを決めるのです。


裁断の良し悪しが本の美しさの全てなんだと思いました。どんなに表紙を凝って美しくても、本の断面がガタガタしてると台無しなのでした。裁断作業でどうしても出てしまうズレを、ここでトントンしながら微調整するのです。この工程の為に印刷するところから大事で、印刷機に紙をトレーに装填する時も注意が必要です。間違えると手作業の裁断のきたない切り口が表に来てしまい背を和紙で隠せません。せっかくのきれいな面が背に来てしまいます。背に自裁断面が全てくるように慎重にトレーに紙を入れて印刷するのが重要です。そしてトントン作業です。


手裁断で微台形にどうしてもなる紙を、表側の断面をとにかく美しく揃えたいため念入りにまずこの面をトントンします。


次に重要なのが上面です。ガタつきがどうしてもここで出ます。下面を犠牲にして微調整します。


もし表上下面の切り口全てが揃っている場合それは奇跡が起きたと思うようなめったに起こらない喜びとなります。その場合でも背表紙部分まで完璧に揃う事はありません。こちら側は見るも悲しい断面のガタガタです。それを和紙が隠すのです。


妥協が必要なトントン作業で、これ以上はキレイに揃えられないなという妥協点を見つけると今度は慎重に強力クリップでとめます。ここで気を抜くとトントンの最初からやり直しになります。しっかり押さえてないと紙は一瞬ですぐにズレます。そして前回の製本時のノリ付けではノリの状態が悪かったせいか(ふすま用ノリを水で溶いたあと弱火で数分炊いて作ります。)紙との相性だったのか、本が波打ってしまいました。当初私はノリを使って綴じてました。今思うとなにかノリに憑依されていたのではないかと思うほどなのですが過酷なノリ漬けとなりました。


~貼り合わせノリ屋さん~


一枚一枚の間に数ミリの幅でハケでノリを付けていき綴じます。手早くしないと台無しにします。それを表裏含めた全ページやります。70p~80p~それを一度にだいたい20冊。これが限界です。だいたい徹夜です。どんなに手早くしても3日かかります。(7冊目からは巨大なホッチキスを導入したので以降製作時間が1万分の1くらいに短くなりました。体感覚では100万分の1の時短感覚です。今までナニをやっていたんだと。なので今回の6刷目はいろんな意味で貴重かもしれません。)


~ちょっとお得なお知らせ~

その時の第6刷のものを今回500円でアウトレットにして出す事にしました。

この背表紙が波打った本は、はりきって遊び紙まで装填したものでした。この遊び紙も梅の透かしが入った和紙で一目惚れした和紙でしたが、それが数年間丸めたまま寝かせたため今だに表紙をめくると本の先頭でクルっと巻いてしまってます。自家手製本の装丁の味わいと舞台裏を温かくみていただけるとありがたいです。



~題字は大事~


そして版を重ねて6刷目の「歌は道 道は歌」では念願かなって筆文字を題字に出来ました。筆文字遊びのアーティストは「三十」様です。1回の注文でやり直しは3テイクまでがお約束だったのでその枠全部使い書いていただいた中から選びました。題字って大事なんだなあとしみじみ思った次第でした。


~和紙の図柄へのこだわり~


和紙は日本橋まで買いに行きます。「日本橋 小津和紙」さんにずっとお世話になっています。どうしても店頭で図柄を見て決めたい。手触りを確かめて選びたいのです。和紙は見た目もさることながら手触りが他の紙との大きな違いです。触覚の気持ち良さは画面ではどうしてもお伝え出来ませんが触っててとっても気持ち良いのです。


今回3冊目の「歌華 逸の重」で使用した和紙はこれで終わりの図柄です。こちらも廃版の図柄のようです。


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装丁についてこだわりを披露というよりも苦労話と奮闘記になってしまいました。


長々と失礼しました。お読みいただきありがとうございます。


以下、せっかくなので少し内容もご紹介させてくださいませ。もし気に入っていただけましたら「歌は道 道は歌」の第6刷を最新7刷目で変更した全ページを別紙添付し最新刷と同じ状態にしたものを500円でお得にお買上いただけますのでお試しにいかがでしょうか。


宜しくお願いします。


*******内容紹介*******


鏡に映して反転させた文章が、同じ文章となったり、別の文意で文章が成立していたり、の回文、表裏文。それを歌にしたものを「まわりうた(回文歌)」、「ともゑうた(巴表裏歌)」といって、短歌や俳句や散文詩で楽しんでいます。


回文に成立するだけでも驚き、同じ言葉の音列から当て字替えで違う文意の歌が現れたり。新しい歌が出来る度、新しい発見に尽きず驚かされます。


言葉はそれ自体が遊んでいるようです。


「いろはうた」が、有名な「いろは歌」だけでなく創作出来るものなのだと知って以来、新しい「いろはうた」に挑戦し続けています。回文和歌は今年で早9年目になりました。今まで作った数百の歌の中からよりすぐりを本にしています。


日本語が元々持っている言葉遊びを共に驚き楽しんでいただけたら嬉しいです。



~本文より中身紹介~


「歌は道 道は歌」より


―まわりうた 回文歌― どちらから読んでも同じ歌に成っている歌です。

みなもはゆ いめふなとした さくらなら くさたしとなふ めいゆはもなみ

水面映ゆ 夢舟とした 桜なら 種多枝となふ 命游はも波


―まわりうた 回文歌―

みなきよは とほのいかつち うちてりて ちうちつかいの ほとはよきなみ

海凪夜は 遠の雷 うち照りて 宙至ツガイの 陰は良き波


―ともゑうた 巴表裏歌― 逆から読むと別の歌が同時に成立している歌です

なかきつな ひきしこゑこひ かなきつと しほしひまたは みやまいとしき

(左から)汝が絆 惹きし声恋ひ 鹿鳴き都度 思慕し日待たば 深山愛しき

(右から)帰しと今 闇は賜ひし 星と月 汝が碑 声 古祠 機微懐きかな


「歌 華 逸の重」より


―いろはうた―

のるぬくみ      乗る温み

えかたきやはら    得がたき柔ら

そろほよす     そろ頬寄す

さへつりもむゐ    さへづりも無為

いとしけれ     愛しけれ

あわをめせ      粟を召せ

こゆなねおひて   越ゆ汝ね追ひて

うちにまふゑん    家に舞ふ円

―いろはうた―

しゆういちかつの   十一月の

へらんたにゐねと   ベランダに違ねと

ひまわりみやるを   向日葵見やるを 

てふよゑなされぬ   蝶よ絵な戯れぬ 

あきおそくめはえ   秋遅く芽生え  

せむけころもほす   背向け衣干す 

―まわりうた 回文歌―

さけしれは ゆきにもくせと のみくたく 

             みのとせくもに きゆはれしけさ

 酒知れば雪に黙せと飲み砕く 身の歳雲に消ゆ晴れし今朝

「歌 華 邇の重」より


―96音いろはうた50音二倍―

あそびやせんとてうまれけむ 遊びやせんとて生まれけむ

はないちもんめとうまれけむ 花一文目と生まれけむ  

きせきのいのちをあたへらる 奇跡の命を与へらる   

おこるよりくひしぬくふゑみ  怒るより苦秘し拭ふ笑み 

わらつたかつにやかてぬゆめ 笑った数にや勝てぬ夢  

しはゐもすゑささなにをえす 芝居も末ささ何を得ず  

おろわねそへり         おろ我寝そべり     

みゆゐよろこふほほえね   見ゆ慰喜ぶ頬得ね   

―まわりうた 回文歌―

むらくさに たたえむはかり このかいか

           のこりかはむえ たたにさくらむ

 叢草にただ笑むばかりこの開花 残り香は無依 唯に咲くらむ

―まわりうた 回文歌―

みかさやに をさまるきさき てふきさき

          ふてきさきるま さをにやさかみ


 身が鞘に 納まる鋒 蝶鬼裂き 不敵さ切る間 さ青に優髪


おぼえがきと雑感:今流行りのアニメの世界観と重なるものが出て面白かったです。

刀身を抜いた事をその鞘に納めたのを見て、あ、抜いたんだ、と一陣の優しい風が吹き抜けるだけの場、そこに居るそれを見ていた人、という感覚を受けるものでした。

刀術師と鬼の間にひらりと入って来た蝶々、その蝶がすらりと横切った後に既に倒れている鬼、まるで蝶の美しい羽根が鬼を切ったかのよう、いつ抜刀していたのか、鞘に刀身を納めている姿だけがある。青い空に優しく髪が風に揺れていた、もしくは青いオーラを纏うような風体。といった風景です。「切先」は「きっさき」で「きさき」ではないです。整えるために「つ」を省かないと出来ず、それほど無理やり感は感じなかったのでそれでいきました。また変換では切先は一文字で「鋩」としか出ないのですが、刀部位辞書?には「きっさき」の字に「鋒」がありこちらがイメージ通りなのでこれを表記としました。


どうやって作っているのか?!、と出店をした初めからよくいただく質問なのですが、

パターンというものが、有りそうでないようなあるような、同じような筋で出来た事が記憶にないのでなんとも言えません。ただ言える事は、言葉が先に在る時も自分のこうしたい、が先に在る時もどちらも言葉と二人三脚で作っているのだというのはとても感じています。

―48音いろはうた―

さねつきゐぬま   さね月居ぬ間 

これおほろ      これ朧    

わえてちりたす   吾得て散り出す

よるへゆけ      夜へ行け   

あしもとをふく    足元を吹く  

ゑみにひそむ     笑みに潜む  

うんめいのかせ   運命の風   

やはらな        柔らな  



■創造の杜 first_firmament ―最初の蒼穹―

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