*本記事にはホラーアンソロ「一白界談」の装丁ネタバレが含まれます。
カバー付きの文庫本同人誌、憧れますよね。
でもカバーを付けちゃうと、本体側の表紙は隠れてしまいます。
しかし折角「表紙」があるのだから、表紙もカバーもどちらも楽しんで欲しいということで、今回ホラーアンソロジーを出すにあたり「フルカラー表紙+クリアカバー」の装丁を試すことにしました。
実物はこんな感じ。
カバーイラスト・装丁担当:tamaさん (本記事は同サークル所属のmeeが執筆しています)
表紙側にあるもの:「一白界談(書名)」「蓮の葉・茎」「女の子(体)」+背景
カバー側にあるもの:「いっぱくかいだん(ルビ)」「蓮の花」「女の子(服)」
本稿ではこれからこの装丁を実現するにあたり大変だったことをつらつら書いていきますが、そんな苦労なんて吹き飛んでしまうほどの、完成品のこの美しさ!
装丁についての記事なので、ちょっと装丁ネタバレも含みながら、
「フルカラー表紙+クリアカバー」装丁にして良かったこと、
「フルカラー表紙+クリアカバー」装丁にして大変だったこと、
をそれぞれ書いていこうと思います。
良かったポイント①:単純に豪華
元絵がとてもいいので普通に印刷してもかなりいい本になったと思いますが、クリアカバーとしたことで見た目にも豪華な装丁になったなぁと思います。
また、クリアカバーと表紙が微妙に高さがずれていることから、光の当て方によっては「いっぱくかいだん」の文字や「蓮の花」の影が表紙側に落ちるようになり、レイヤー感が強まりました。まるで水槽のなかに少女を閉じ込めたかのような透明感が生まれたかなぁ、と思っています。
また、これはクリアカバーとは厳密には関係ないですが、
表紙と裏表紙をそれぞれくっつけることで「一白界談」の書名が
出てくるようにもなっています!
良かったポイント②:ギミックが作れる
【表 - 表紙】
カバーを付けていても、表紙側に描かれた少女の体(骨!)が少しだけ透けるようになっています。
また、カバーを取ると蓮の花の下も見れるようになっています。
【裏 - 表紙】
この籠のなかに宿る怪し気な光。カバーを外すと……明らかに下に何かがありそうですよね。
表側には蓮の花などもあることから、取ってみたい、でも取ると恐ろしい、しかし取ってしまいたい……。と、捲る楽しみのあるギミックを入れられたかなぁと思っています。
そうそう、この本のコンセプトは「一話足りない百物語」となっております。
99編、どこをあけてもホラー話!さまざまな怪談をどうぞお楽しみください。
良かったポイント③:背表紙は可読性を確保できる
背表紙にはもちろん書名「一白界談」が書かれております。
ここだけお花が半透明になっているので、いちおう読めるようになっています。
(500円玉は比較用。500円玉より太いです)
横から見るとほんとうに太いですね。文フリで手に取って下さった方が、京極夏彦の本のとなりに並べて写真とって下さってました。(京極夏彦には普通に負けますが、並べたくなるぐらい厚い本だということです。だいたい「白夜行」ぐらいの厚さです。)
……と、良いところをたくさん分かっていただけたところで、この装丁を実現するにあたり大変だったポイントをご紹介していければと思います。
大変ポイント①:それぞれ別印刷所さんに頼んだ
今回、本はStarbooksさん、カバーはプリントオンさんにお願いしました。
「本」も「カバー」も同じ印刷所さんで刷るのであれば、印刷時に多少合わせながら確認してくださった……ようなのですが、今回は別印刷所さんとしたため、どちらの印刷所さんからも「頑張りますが、たぶんズレますよ……!?」とご連絡いただくことになりました。
入稿データのほかに最終完成品のイメージ等も共有しつつ、印刷所さんと調整を進めていきました。(印刷所さん側も「背幅をこうすると、最終的にこんなイメージ」等最終完成品のイメージをベースにお話してくださって、ものすごくありがたかったです)
デザイン的に上下ズレすると少女の肩がいかってしまうので問題なのですが……多少の左右ズレであればまあ、ホラー小説だし……(?)ということで、出来る限り調整は行いつつ横ずれはもう許容することにいたしました。(ズレは許容します、とお伝えしたとはいえ、印刷所さんにはかなりご配慮いただきました。ありがとうございました……)
大変ポイント②:太い本は背幅が変わる
この本、そもそも648P(3.3mm)というちょっとばかし太い本でもありました。
結果、本の印刷所さんから「背幅が数ミリ変わるかも」というご連絡が。太い本の場合、紙質や状態によっては数ミリ変わってしまうことがあるんだとか……!?(実際、3㎜程変わりました)
背幅が変わると当然カバーにも影響がでます。しかし刷ってみないとどのぐらい変わるかは分からないとのこと。別印刷所でクリアカバーを依頼していることも含めご相談したところ、「どちらかというと『縮む』方向で変動する」と教えていただいたので、では「本が太ってしまいカバーが入らない」ことはないだろう、ということで、縮むことも考慮しつつ祈るような気持ちでカバーサイズを決めました。
普通のカバーであれば、「自分で巻くときにうまく調整すればいいじゃない」という話なのですが、これはクリアカバー。そもそも紙ではない。厚みがあり、人の力では綺麗に折れないので、かならず折筋が4本入ってしまっています。
「本が太ってカバーが入らない」ことを一番避けたいということを両印刷所さんにお伝えし、これなら大丈夫だろうという余白を持たせたうえで発注いたしました。クリアカバーの場合はもともと多少余裕を持たせておいたほうがいいとのことで、結構幅を広くしたのですが、カバー自体の厚みもありますし曲げ方等によって結構うまく調整できました。ほんとうにうまくいってよかった……(しげしげと本を眺めながら)
大変ポイント③:太すぎて標準範囲におさまらず「オーダーメイド」扱いとなる
3cmを越えている太い本ですので、クリアカバーは「オーダーメイド」商品扱いとなりました。実は事前にご相談が必須だったとのことですが、気づかず普通に発注してしまいあとでご連絡をいただきました。太い本を頼むときは皆さん仕様をよくよくご確認ください……。
というわけで、表紙フルカラー+クリアカバーで作った本の装丁に関する記事でした。
ちょっと特殊なことをしようとした割には、両印刷所さんの丁寧なご対応・さまざまなノウハウをご共有いただいたおかげで、スムーズに綺麗に作れたのではないか、と思っています。
(本記事を書いているmeeは印刷所さんとのやりとりを行っただけで、実際に表紙イラストを描いたり装丁を考えてくださったのはご担当のtamaさんです! 本当にありがとうございました!)
「一話足りない百物語」、99編どこをあけてもホラー話なアンソロジー、
カバー下の秘密も含めてどうぞどうぞお楽しみください!
* また、本記事は主に印刷所さんとのやりとり等について書かせていただきましたが、別途「折り紙でコピ本を作る」記事も書いています。手作り本にはそれはそれの楽しさがありますよね。よろしければ~。
折り紙コピ本の作り方:https://particle.fanbox.cc/posts/1629120
記事担当:放課後文殊クラブ / mee
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