鹿紙路(サークル主と同名のサークル名)の今回の初売り『根を編むひとびと』は、A5変形の手製本です。
東欧っぽい村に暮らす女ふたりの生態学百合SFファンタジー。
こちらでは、この本の製作過程についてお話しします。
その前に前提情報ですが、わたし=鹿紙路は、同人活動開始と同時に手製本を始めて、5年ほどになります。その間、製本工房のワークショップに参加したり、自分で年間200冊くらい製本したり、手製本とバイトでも関わったり(今は違う仕事をしています)、と、一般の方からすると異様な感じに手製本をしまくっており、よって以下のお話も度を超した感じになります。すまない。
(1)造本設計
同人誌の装丁を考える段階というのは、ひとによって、あるいは作品によって違うと思いますが、今回は、プロットができるかできないかのうちから決まっていました。その時点から一年以上経っているので、もはやうろ覚えなのですが、
・手仕事が重要な話なので、てざわりが独特で親しみやすいようにしたい
・主人公(生態学者)の研究ノートみたいな見た目
というコンセプトで、
・風合いのある特殊な厚紙を表紙にして、上製本のようなかっちりした感じにはせず、でも糸を使った手製本らしさを出したい
という方針が決まり、三ツ目綴じ(紙に穴を三つ開けて糸でかがる製本形式)をアレンジした構造にすることにしました。当時気軽に見れる立場だったので紙見本を見ながら用紙も決定しました。
その後、執筆中は設計については寝かせ、脱稿してから試作をし、構造上弱い部分を製本テープで補強する形に。
ということで仕様決定。
表紙 GA クラフトボード-FS ムーンストーン20kg
題簽 シープスキン80kg 白
本文 書籍用紙70kg
遊び紙 ビオトープGA-FS 60kg 8 色
コーネル装飾 NICHIBAN 再生紙製本テープ
綴じ糸 草木染め木綿刺繍糸
見返し ラッピングペーパー(以前から買い集めていたもの)
という陣営です。
(2)製本過程
この本の作り方ですが、こんな感じです。
①本文を印刷する
自宅のモノクロレーザープリンタで、A4の両面にA5の原稿を章ごとに冊子印刷で印刷します。
②表紙・見返しを裁断し、表紙に折り目をつけ、四隅に製本テープを貼る。見返しを表紙に貼る。
↑貼り終わったところ。
③表紙は重しを載せて乾かし、本文用紙は遊び紙と一緒に二つ折りにする。
④ゴム板の上で本文用紙に目打ちで穴を開け、小口側を化粧裁ちする。
⑤穴と背表紙に入れた切れ目に針で糸を通し、本文と表紙をくくりつける。(これ、文章だと全然伝わる気がしないのですが、気になった方はぜ実物を手にとって確かめてみてください……)
閉じた状態にぐるっとゴムを回して結い、題簽をボンドで貼ったら完成です。
(鹿紙路)
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